魚作商店の干物作りへのこだわり
「素材を吟味し、仕入れた素材に最善の作業を行い、干物を食べていただいたお客様に喜んでもらうこと」が当店のこだわりです。
良い素材を仕入れれば、美味しい干物は作りやすい作業となります。
しかしながら、干物の素材は自然の恵みなので、当社が望むような鮮度、肉質、単価といった品質をクリアできる素材には出会いません。
その中で大事なことが二つあります。
- 水揚げされる魚=「大自然の恵みに感謝」すること。
- その大自然の恵みを取って来てくれる「漁師の方々に感謝」すること。
仕入れてからが当社の腕の見せ所です。
美味しい干し物の製造~お届けまで
- 鮮度管理
- 解凍管理
- 味付け管理
- 乾燥管理
- 保管管理
- 出荷管理
- お客様とのコミュニケーション
気候に応じて、外気温が高い時期は砕氷を使い、冬場の3倍、4倍の砕氷で鮮度管理いたします。
寒い時期は魚には良いのですが、従業員には堪えます。
冬場も氷は欠かせません。
加工の中で一番重要な管理です。
冷凍された素材をいかに鮮度を落とさず解凍出来るか。
ここはまだまだ研究しながら改善しないといけないところです。
塩物の塩漬けは塩分濃度を測る塩度計にて確認した、当店の熊野灘海塩水を庫内0度から4度の場所で保管し、味醂液と同様に、使用する魚の重さに対して、使用する量、時間を決め、新しい原料時には出来上がりの試食を行い、次に繋げています。
冷風乾燥機で作る干物により、温度管理、乾燥時間を決めております。
干物を仕上げる時に大切なことはイメージを持つことです。
そのイメージを持って、乾燥具合をチェックします。
気候、温度、湿度の影響を受ける工程です。
開きの干物に関しては、当店、注文生産となります。
お客様からの注文を確認してから乾燥機で干し上げて出荷いたします。
なので、開きの干物(あじ開き・さんま開き・かます開き・さば塩干し等)は朝一に干して当日出荷を原則としております。
ご来店で予約注文されていない方には販売できないこともございます。
開きの干物は冷凍保存していると冷凍焼けが発生しやすいため、当店ではこの様な販売方法を行っております。
味醂干しや丸干しは冷凍焼けが発生しにくい干物になっています。
味醂干しは味醂液に含まれる添加物によって魚の肉質がコーティングされているため、また、丸干しは加工の際、素材に包丁を入れないことで魚本来の皮が肉質の冷凍焼けを防ぎます。
さらに、当店の味醂干しは干物の酸化原因である外気に干物が影響されない様、ソフト真空包装になっております。
なぜソフト真空なのかというと、真空強度を上げると干物自体が押しつぶされるからです。
押しつぶされた干物の食感が私好みで無いので、ソフト真空となっております。
このように包装、箱詰めされた干物はマイナス30度の冷凍庫で保管します。
マイナス25度の冷凍庫とマイナス30度の冷凍庫では全然違います。
庫内で作業している私たちの感覚ですが、マイナス25度では庫内の冷えの厳しさがマイルドな感じです。
やはり、マイナス30度になると体への感じ方が違います。
夏は涼しそうに思いますが、これがなかなか、外気30度、冷凍庫マイナス30度の60度差が体にダメージを与えてきます。
冬は冬で外気10℃、冷凍庫マイナス30度のため、冷凍庫に数十秒入るだけで体が冷え込む感覚を覚えます。
やはり保管するにはこのマイナス30度というラインは重要だと思います。
干物の直送便について、当店は通年、冷凍便を使用しております。
夏場の使用は当たり前でありますが冬場にも冷凍便を使用します。
それが一番品質を保てると考えるからです。
この取り組みも、お客様からのお問い合わせでした。
品質を落とさずにお客様に安心、納得していただくために実施しております。
また、予測不能な荒天時や交通事情によって、配達不可時でも冷凍保管で保たれます。
お客様ご不在時も冷凍保管できちんと管理していただいております。
当店は郵便局のお振込用紙にお客様のお声を書いていただくスペースをもうけております。
そこに、お褒めのお言葉やお喜びのコメントが掛かれてることが当店の喜びでございます。
また、改善点や今回は期待はずれといったお声もございます。
そういった貴重なコメントには真摯に向き合い、お客様と直接お話をさせていただいております。
原因を探し、改善し、気持ちを引き締め直し精進してまいります。
そういうお客様に支えられた改善を進め、お客さんに喜ばれる様にコミュニケーションを実施しております。
干物屋として最善を尽くす
鮮度管理・解凍管理・味付け管理・乾燥管理・保管管理・出荷管理・お客様とのコミュニケーション、この取り組みを完璧にこなしても本当に美味しい干物という物は出来ません。
やはり良い素材(大自然の恵み)を高鮮度、高品質(漁師さんのこだわり)で水揚げされなければ究極の干物の味には届かないのです。
そういった中で干物屋として「最善を尽くす」ことが当店のこだわりです。
「失敗は成功の基」
失敗の中にはヒントがあり、逆境の中にはチャンスがあります。
当店は創業以来からそういった、たくさんの失敗や、お客様からのお声を大事にし、なぜそうなったのか、どうすれば御客様に喜んで頂けるか?
「やっぱり喜ばれたいから」
この思いを大切に、良い素材は最高に美味しく、自然の恵みに感謝し、自然から与えられた素材を当店の智恵と設備で美味しい干物に仕上げるよう精進致します。
干物の作り方:味醂干し(みりんぼし)編
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【工程1】味醂ダレの原液を作る
- 味醂干しに欠かせないのが、そのお店独自の味醂だれです。特に味醂干しは、その商店の味というイメージがつく干物です。
西暦1920年(大正9年)創業、初代創業者から試行錯誤してきた味醂干しの味を、西暦1977年(昭和52年)に法人化し、加工場の建設と設備を導入。ボイラを導入し、独自調合の味醂原液作りの始まりです。貫流ボイラを使用しています。保有水量が少なく、早く蒸気を発生させることと、コンパクトな設計なのが特徴です。200ℓを沸かすのに約30分足らずで沸騰して来ます。西暦1989年(平成元年)現在の確立された味醂原液が完成。今現在でも味醂原液の割合は変わらずも、漬込み量や漬け込み時間は素材によって変えています。
それでは、魚作商店の秘伝の味醂ダレについて、自社ボイラを使用し、ボイラ対応2重釜に水蒸気を送り込み、釜に三温糖・天日塩・飲料水を独自の割合で入れ、よくかき混ぜながら焚いていきます。作業としては簡単ですが、割合が確定されるまで長い年月を経て、やっと出来た正に秘伝の調合となります。夏場は暑くて大変ですが、味醂原液を焚き始めると、甘い匂いが立ちこみ、それだけでも食欲がわいてきます。
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【工程2】秘伝の味醂ダレを作る
- 焚き上げた味醂原液は一晩寝かせます。高温での作業は危険なので、冷ましてから保管用のテンタルに移します。最終調合として、味醂原液に醤油と味醂を合わせ冷蔵庫で保管します。
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【工程3】味醂に使用する魚を加工する
- 味醂干しに使用する魚を加工します。加工方法は魚種とサイズで違ってきます。頭を切り落とし、魚種によっては開いて大骨付のまま、大骨を取り除いた物、片身の3枚おろし、片身を更に切身にしたりと形態は様々です。
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【工程4】魚を秘伝の味醂ダレに漬け込む
- 加工された魚を味醂ダレに漬け込みます。漬け込む魚の重さを計り、その重量に対して決めた味醂ダレの量を使用し、1枚1枚、丁寧に身を下側にして漬け込みます。漬込み時間は魚種によって違い、また、同じ魚種でも肉質・脂感・鮮度・サイズ・加工方法によって決めております。その魚本来の旨味を味わえる味醂干し魚の旨味と味醂ダレのバランスを考え、というより、試食して自分達が美味しいと思える味醂干しに仕上げております。
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【工程5】干物を乾燥させる
- 漬け込みを終えた商材は1枚1枚重ならない様、セイロという干物を干す専用の網に並べます。そのセイロを20丁ほど差し込むことができる、干物干し専用の台車に差し込み、乾燥機で仕上げます。干物における乾燥工程という位置づけは非常に重要で、干物である所以の工程となります。その乾燥時間、乾燥温度は、魚種・魚質により異なります。素材の特性、旨味を引き出せるよう、出来上がって食べる際の味のバランスや食感をイメージします。一番の決め手は、イメージを持って、乾燥の入り方を観て・触って・確認する事です。
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【工程6】美味しい味醂干しの完成!
- 出来立てを直ぐ炭火で炙るのが最高ですが、なかなか現実的でないので、弊社ではそういう風味をお客様にご提供するために真空包装機で軽めに真空パックし、製品を素早く冷凍するように管理しています。出荷も冷凍便を使用し、お客様での保管も冷凍保管をお願いしております。お召し上がりの際は、真空袋のまま流水もしくは水に漬け込んで解凍してください。外気や冷蔵庫での自然解凍も可能ですが流水が一番早いかと思います。解凍した味醂干しは、身の方から中火で焦げないよう焼いていただき、皮の方はサッと軽くあぶる程度でよいかと思います。焼き方で風味・味・食感が変わります。上記をご参考にご自分のお好みを見つけていただけると幸いです。
干物の作り方:丸干し(まるぼし)編
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【工程1】仕入れ
- 丸干しは鮮度と魚の胃の中にエサが残っていないかが重要となります。
なので、前浜=熊野市遊木町の熊野漁協で仕入れることが理想です。
当店から車で約5分
もちろん車で片道1時間30分ぐらいであれば問題なく仕入れに行きます。
この鮮度によって、出来上がりの色艶が違います。
また、極端に鮮度が落ちていると、腹が割れてしまうこともあります。
鮮度を保つには、海から船に積み込む時の氷の量で決まります。
後から氷をつぎ足しても、鮮度落ちの進行を緩めることはできますが理想ではありません。
魚が活きいる状態から、いかに素早く氷締めするかが鮮度に関係します。
エサ食いの見分け方として、定置網漁という魚を待ち伏せし、その中に入った魚をすくい上げる漁法は、魚がエサを食べて消化した頃、つまり朝方に漁に出航します。
なので、定置網はエサ食いについて、そんなに心配はいりません。
それでも、予期できないこともあるので、その日の魚種の混ざり具合や、魚のサイズ、魚の腹を目視や触感で確かめます。
漁法の中で棒受け網漁があります。
これは、船で魚の群れを探し、群れを確認してから網で囲い込んですくい上げます。
魚を見つけたら漁を開始するので、夜中に取った魚は胃の中にエサが残ります。
豊漁時は、良い品質でないと取引値が相場崩れするので、朝方に漁を開始するよう調整していますが、不漁時は質よりも仲買人の需要さえあれば価格も高相場で取引されることもあります。
仕入れでは、エサ食いをきちんと見ることができる判断が求められます。
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【工程2】塩漬け
- 揉み塩製法と立塩製法を使い分けます。
揉み塩製法は、魚に塩を混ぜ合わし、素材から出てくる水分が塩をとかし塩水となります。
塩だけしか使用しません。
当店は、タコのヌメリ取りに使用されていた機械で作業します。
木で作られた箱の中に魚と塩を入れ、フタを閉めます。
その木箱がモーターの動力で回る仕組みです。
1回に100kgほど魚を揉むことができます。
塩で魚を揉む理由は、魚のウロコをとるためです。
揉んだ魚をタンクに入れ、決められた時間まで寝かします。
立塩製法は、小さいサイズの魚や、肉質や表面が柔らかい魚に使用します。
まず、塩を海水でといて塩水を作ります。
その塩水に魚を入れて塩漬けします。
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【工程3】水洗いと乾燥
- 塩漬けした魚を水洗いし、干していきます。
通常は乾燥機で仕上げます。
12月から2月末くらいまでの寒い季節は、当店の屋上に丸干しを天日干しいたします。
冷たい外気と風が干物を乾燥させてくれます。
干物の作り方:燻製(くんせい)編
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【工程1】炭に火を入れます
- 干物に加工してできた商品を燻製専用の網に、重ならない様に並べます。
並べた干物の網を燻製用の台車に入れていきます。
炭に火を入れていきます。
消し炭を利用することで新しい炭に火を入れることが簡単にできます。
簡易ガスバーナーで消し炭に火を入れます。
消し炭に火が入れば、その上に新しい炭を置きます。
吹きやの様な筒(竹か、塩ビパイプ)を使用し、その先端に小さな穴を開けます。
その小さな穴から空気が出るようにし、火に空気を送り込み燃焼率を上げます。
これがけっこう効きます。
約30分で火が起こせます。
炭の熱源が出来れば、燻製機の中に入れ、桜を入れて燻していきます。
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【工程2】燻す
- 煙が切れない様、また、庫内の温度が80℃ぐらいに保てるように炭の量や置き方を変えて調整します。
桜は炭で燃えない様に、炭の隣に置くとか、直接炭に触れない様にしないと煙が出ません。
また、桜自体が燃えてくると庫内の温度が急上昇します。
こまめに温度管理し、煙を切らさないように燻していきます。
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【工程3】寝かす
- 完成した燻製は、直ぐに袋詰めせず、一晩寝かします。
寝かせた燻製を真空袋に入れて完成です。
干物の作り方:開き(ひらき)編
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【工程1】生処理加工と解凍処理加工があります
- 生処理加工と解凍処理加工があります。
生処理加工はその日に取れた鮮魚を加工します。
一番きれいに仕上がります。
解凍処理加工では、元の冷凍原料の鮮度が非常に重要です。
また、解凍方法も大事なポイントとなります。
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【工程2】塩漬け
- 開きの塩漬けは立塩で行います。
海水は熊野灘の海洋深層水を使用し、塩は天日塩。
決めた塩分濃度の塩水を作ります。
塩水を入れ、開いた魚を1枚1枚、身を下にしてつけていきます。
魚の量が多くなれば、その都度塩水も足します。
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【工程3】乾燥
- 水洗いをして、セイロという干物を並べる網に並べ、乾燥機で乾燥させます。
安全で美味しい干物(ひもの)のご購入はこちら!
魚作商店の干物は、甘辛い秘伝の味醂ダレが素材の旨みを引きたて、お口いっぱいに干物の旨みが広がります。
是非、食べ比べしてみて下さい。
魚作商店の干物は複数のメディアでも取り上げられており、多くのファンが全国におります。是非ご賞味下さい。